浦和地方裁判所 昭和28年(モ)83号 決定 1953年4月15日
浦和市大字大口二百四十三番地
申立人
ピースミシン製造株式会社
右代表者取締役
影山信幸
右代理人辯護士
高瀨太郞
右の者からの昭和二八年(モ)第八三号会社更生法による保全処分申立事件につき当裁判所は左の通り決定する。
主文
一、申立会社はその使用人との雇傭関係より生じた債務を除き昭和二十八年四月十三日迄に負担した一切の債務の弁済をしてはならない。
二、申立会社はその所有に属する別紙目録記載の物件及び権利につき讓渡、担保権の設定その他一切の処分行為をしてはならない。
三、申立会社は如何なる名目乃至方法を以てするを問わず金員の借入をしてはならない。
四、前三項の場合において予め当裁判所の許可を受けたときはこの限りではない。
理由
申立会社は本件申立の事由として同会社は昭和二十八年四月十三日当裁判所に対し申立会社につき更生手続を開始せられたき旨の申立を為し同事件は同日当裁判所昭和二十八年(ミ)第一号事件として受理せられた。然るに会社経理の現況は手形不渡の寸前にあり即ち同年四月十三日迄は会社の手形債務については債権者と折衝の上手形書換により或は手形受取人との話合で手形を買取り決済して当面の危機を切拔けてたのであるが既に支払期日の到して現に債権者に対し支払延期申出中の未処理の手形額面合計四十五万余円の外四月中に決済しなければならない手形額面合計金九百七十三万七千余円の債務を負担し会社資金の現状では右手形の内差し迫つた支払期日四月十六日、十七日、十八日の手形等に対する決済は到底不可能でありこれが不渡となつて取引停止処分を受けると爾後銀行その他の金融機関との取引が出なくなり会社の更生に著しい支障をたすばかりでなく更生手続開始前に一部の債権者に支払をすることは公平を失し将更生計画樹立等に支障をたすことにもなる、尚又会社は別紙目録記載の物件及び権利を所有しているが万一これを他に処分することがあつてはこれ亦会社の更生に甚大な悪影響をたすことになるからここに会社更生法第三十九条に基き更生手続開始前の保全処分として主文の如き内容の裁判を求めるというのである。
当裁判所は提出せられた総べての疎明書類、申立会社の代表者審尋の結果に徴し本件においては更生手続開始の立申に対する裁判を為す迄の処分として会社更生法第三十九条所定の会社の業務及び財産に関し申立の趣旨の如き内容の保全処分を命ずる必要ありと認め主文の通り決定する。
昭和二十八年四月十五日
浦和地方裁判所
裁判官 大中俊夫